聖痕大戦 "ブレイド・オブ・アルカナ" アナザーストーリー
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第一章 凍てる戦争
16『《暴風》作戦』
後世の歴史的資料天慧院公文書図書館所蔵(写本)
ケルバー戦作戦命令
(一〇六〇年二月二四日付け作戦命令第六号《暴風》作戦)
王国騎兵軍指導本部――一〇六〇年二月二四日
騎兵軍司令長官
OKW,GenStdh,Op.Abt.(1)
Nr.430246/60g.Kdos.Chefs
極秘命令――高級指揮官専用――運搬は将校によるべし(13部中の第4部)
AOK2Ia591/60g.Kdos.Chefsache
Einig.17.4.43(2 Anlagen)Do.
〈作戦命令第六号〉
天候の許す限り速やかに、本年攻勢の第一陣として《暴風(ゲヴィッター)》作戦を決行する。
本作戦は極めて重要にして、迅速かつ的確に実行すべし。本年春と夏の主導権を我が軍の手中に収める作戦であるため、すべての準備は最大の注意と努力をもって行い、最良の部隊、最良の指揮官、大量の物資を各重点地区に集中すべし。各指揮官及びに参加将兵は本作戦の重要性を肝に銘じ、ケルバーの勝利は全世界への狼煙たるべし。
作戦に関して以下のごとく命令する。
(1)攻撃目標
迅速かつ猛烈に、中央軍集団はアルザンス北東部周辺域より出撃し、ケルバー地区の敵戦力を包囲殲滅すべし。
攻撃進展の過程において、クランベレンを基準に置いた線に第二次攻勢のために新戦線を構築すべし。
(2)留意点は
a 奇襲効果を最大限追及し、何より敵に攻撃時期を悟らせぬこと。
b 攻撃兵力を狭い地域に集中させ、すべての攻撃手段(槍兵、騎兵、獣兵、弓兵等)の局地的優勢をもって、攻撃軍間の連携により、一気に包囲網を完成させること。
c 攻撃の先鋒に対し可及的速やかに後方より側面援護兵力を投入し、先鋒の攻撃衝力を維持すること。
d 包囲網内に各方向より早期に突入し、敵に余裕を与えず殲滅すること。
e 攻撃は迅速に行い、敵に包囲を脱出させず、他戦線より強力な予備隊を招致させぬこと。
f 新戦線を早急に構築することにより、快速部隊を主とする兵力を、早期にその後の作戦のために使用可能とすること。
(3)東方軍集団は集中してプラウエンワルト――ゲシュペンフェルの線を出撃し、ミンネゼンガー中西部にて中央軍集団攻撃部隊と連絡をとるべし。ケルバー南方への攻撃を援護するため、可及的速やかにミンネゼンガー公国グルフブルクに達すべきも、そのためミンネゼンガー公国における重点形成に支障あるべからず。ケルバー南方への攻撃援護には一部の兵力を用い、同時に形成中の包囲網内へ突入させるものとする。
(4)中央軍集団攻撃部隊はアルザンス周辺域より最大限に集中して出撃し、ケルバー西方を迂回してケルバー周辺及び東方で東方軍集団攻撃部隊との連絡を完成させるべし。南方への第二次攻撃準備のため、可及的速やかにクランベレン地区に達するを要すれども、それによって重点地区における兵力集中を減ずるべからず。西方への攻撃援護には一部の兵力を用いるべし。ケルバー西方より東方軍集団境界にまで投入されたる中央軍集団部隊は、攻撃開始にあたり、最高度に攻撃兵力を結集して敵を包囲し、形成中の包囲網に敵野戦軍を追い込むべし。騎兵偵察を続け、敵がひそかに後退することなきよう留意すべし。敵が後退せる場合は速やかに全戦線にわたり追撃するものとする。
(5)両軍集団の作戦準備は、各種の欺瞞措置を講じ、出撃陣地より離隔して行ない、四月二〇日以降、王国騎兵軍指導本部による命令伝達の七日後には攻撃態勢を完了すべし。その場合の攻撃開始日は早くとも四月三〇日。出撃陣地への進出は夜に限り、偽装には特に留意すべし。
(6)敵を欺瞞するため、東方軍集団作戦地域で《ゴール・ベルクフリート》作戦、西方軍集団作戦地域で《ザール・ベルクフリート》作戦の準備を続行すべし。それを各種の措置(敵の目に付く偵察行動、部隊の移動、渡河資材の集積、伝令、密偵の投入等)によって強化し、可能な限り長期にわたって維持すべし。これら欺瞞措置は、もとより必要な各種措置によってザール及びキルヘン戦線防衛強化のために実施される(「10」を参照のこと)。中央軍集団作戦地域においては大規模な欺瞞措置は実行不可能なれども、手段を尽くして敵の判断を妨げることを要す(後退もしくは欺瞞的行動、昼間の輸送、五月初めの攻撃時期に関し誤てる情報を広めること等)。中央軍集団にあって、攻撃部隊に新たに加わる部隊は隠密行軍を旨とすべし。
(7)機密保持のため、絶対必要な人物以外には知らしめるべからず。可能な限り遅い時期にその範囲を徐々に広めること。不注意及び怠慢により意図を事前に漏らす事無きよう、万全の備えをせよ。――防諜機関を増強し敵の諜報活動の制圧に努めよ。
(8)攻撃兵力は、地域が限られ、攻撃目標も明確なる事実に鑑み、絶対必要ならざる装備及び重量のかかる資材は後方に置くこと。それらは妨げとなるばかりにして、攻撃力及び後続兵力の速やかなる進出を阻害する可能性あり。各指揮官は戦闘に必要なるもののみを携行するよう心掛けるべし。軍団及び軍の指揮官はこの点特に留意せよ。交通統制も慎重に行うべし。
(9)補給活動に関する指示、捕虜、住民、戦利品に関する取り扱いについては別紙1〜3を参照。
(10)攻撃成功のためにことさら重要なのは、敵が我が中央及び東方軍集団の他戦区を攻撃することによって《暴風》作戦を変更させ、もしくは攻撃部隊の早期撤収をさせられぬようにすることである。
そのため、両軍集団は《暴風》攻勢作戦とならんで他の重要戦区にも四月末まで手段を尽くし、計画的に準備をすすめざるべからず。ことに陣地構築に全力を挙げ、敵騎兵の脅威ある地点には胸甲槍兵・弓兵を充分に配備し、各所に予備兵力を置き偵察を強化して、敵兵力の重点を早期に探知すべし。
(11)全軍集団は、本作戦命令に基づく攻撃及び防御に関してとった処置を三〇万分の一地図に記入して報告すべし。なお全軍集団の配置図、攻撃及び欺瞞措置のため取り決めた結果をも添えること。
二月二四日ブレダ王国国王ガイリング二世(署名)ニーンブルガー公爵ディアーナ元帥認証(署名)