聖痕大戦 "ブレイド・オブ・アルカナ" アナザーストーリー
Another Stories of "Blade of Arcana" Extra ARMAGEDDON
第一章 凍てる戦争
09『戦略計画』
後世の歴史的資料天慧院公文書図書館所蔵(写本)
王国騎兵軍最高司令官
国王大本営一〇五九年一〇月一五日
OKW,GenStdh,OpAbt(1)
Nr.430246/43g.Kdos.Chefs
国王勅令第21号
《アイルハルト作戦》
ブレダ王国騎兵軍は、エステルランド王国を電撃戦により打倒する準備を進めるべし。
国王大本営および王国騎兵軍最高指導本部は、次の原則に基づいて準備するものとする。
1 全般構想
ハイデルランド地方南部のエステルランド王国軍を、快速戦力の大胆なる使用により殲滅し、戦闘力を有する敵軍が南方へ後退するのを阻止すべし。
しかる後、急追により敵軍が我が王国領土への攻撃を不可能ならしむる線に到達する。作戦の最終目的は、フェルゲン――ツェレンダルの線でエステルランド王国の主要領域を分離することにある。それにより、必要とあらばテロメア公国(編注1:旧ヴィンス公国。西方暦一〇五七年のクリューガー公失踪事件後に、当地の管理は新興貴族カルルマン・テロメア公爵に任されていた)周辺のエステルランド王国最後の策源地帯をエクセター王国軍との協同作戦により無力化できる。
2 予定される同盟国とその任務……省略……
3 作戦指導
A 王国騎兵軍(余に提出された計画を承諾したうえで)
ハイデルランド南部の作戦地域において、中央より東方に作戦重点を置くものとす。ここには二個軍集団を充当の予定。
この二個軍集団の西よりの軍集団(編注2:中央軍集団を指す)は全戦線のほぼ中央に位置し、特別に強力な騎兵・槍兵部隊をもってアルザンス北東部より進撃、ケルバー周辺の敵兵力を撃滅すべし。これにより河川交通の要衝を支配下に置き、より迅速な兵站活動を可能とさせる。これは快速部隊の攻勢に輜重段列を追随させるために必要不可欠な前提条件である。
プラウエンワルト・アルプス西南部よりミンネゼンガー方面に作戦する東方軍集団は、ザール戦線において敵野戦軍を捕捉殲滅すべし。これは中央軍集団の側面にミンネゼンガーの兵力を指向させぬためである。この任務を成功した後に、交通の要衝にして軍事的中心たるフェルゲン占領作戦に移行すべし。
エステルランド王国軍の抵抗が予想外に弱く、壊滅した場合にのみ、両目標の同時攻撃を行うものとする。
キルヘン戦線に配置された軍集団は(編注3:西方軍集団のこと)、ケルファーレン公国への陽動攻撃を指向し、当地の敵軍を常に拘置し続けること。戦況の推移により当地の抵抗力が低下した場合は、キルヘン川を渡河しカルデンブルグへ進撃すべし。
中央部もしくは東部の戦闘に勝利を収めた後の、戦果拡張の目標は下記のごとし。
東部では経済的に重要なプラウエンワルト・アルプス南方域資源地帯の速やかなる占領。
中央部ではフェルゲンへの進撃。
西部では交易港カルデンブルグの占領。
フェルゲン占領は政治的・経済的に決定的効果をもたらす。
ブレダ王国国王ガイリング二世(署名)