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「信じる者の幸福」/展開ステージ
GM :次ですがイベントシーン(マスターシーン)になります。
シーンはリンさんになります。このシーンは登場不可です♪
時間は夜…皆さんが立ち去った後です。
リンは教会の懺悔室で神に謝罪していた。
先程、シェイルに口を塞がれたような状態ではあったにしろ、シャルアリスを騙してしまった事には変わりは無いからだ。
リン :私は…あの方を欺いてしまいました…。(;;)
そして、リンは気が付く。
そろそろ、疲れも癒えたハインの連れてきた女司祭…リーリアが起きる頃では無いかと。
客室の寝室に行き、彼女の傍に行くと…リーリアは小さく呻き声を上げる。
リン :…大丈夫ですよ。
リンは、彼女が安心できる様にそっと、リーリアの手を握る。
それに気付いたのか、ゆっくりと目を開けるリーリア。
リーリア :…ここ…は?
リン :お気付きになられましたか?
リーリア :ここは?
リーリアは不安げに辺りを見回しながら再度、そうリンに尋ねる。
リン :大丈夫…ここは…貴女様に危害を加える人はいません…。
彼女は辺りを見回し…それらしい装飾を認め、リンに少し警戒しながらこう尋ねた。
リーリア :ここは…教会ですか?
リン :余り、無理はなさらないで下さい。
リーリア :あ…はい。助けてくださったのですね…。
リン :あ…はい、一応…ですけど、貴女様のお連れの方が…。
リーリア :あの人は…ハインは何処に?
リン :ハイン…ああ・・・少し…外の方に夜風に当たりに行っております。
リーリア :そうですか…。ともかくありがとうございます。
リン :何か…あったのですか?
リーリア :ええ…。教会が…ウルフェンを狩っているのはご存知ですね。
リン :はい…。
リーリア :彼等は教会では異端者と見なされ…その彼を助けた私の事も異端と見なしたのです。
リン :そうですか…。
リーリア :教会への批判になる話なのかもしれませんね…これは…。
リーリアが自嘲する様に少し笑う。
リン :助けた…といいましたけど貴女様は何かなさったのですか?
リーリア :私は…傷付いた彼を匿い…傷を癒しただけ…。
リン :そうですか…。
リーリア :でも…彼は私を助ける為に…罪を犯してしまいました…。
沈痛な面持ちでそうリンに告げるリーリア。
リン :そう…ですか。
ですが、ここは先程も申しました通り貴女に危害を加える者はおりません。
リーリア :ありがとう…。貴女は…祭司ですか?
リン :私は…教会関係者である前に一人のマーテル(僧侶)です。
目の前で傷付き困っている人がいれば…新派、旧派、異種族…その様なものに囚われていては、全ての人を助ける事など出来ません…。
彼女はそれを聞いて…やっと理解者に会えたという安心からか、表情が少しずつ和らいでいく。
リーリア :異なる者を排除し、殺す事がマーテルの教えだとは私も思いません。
今の教会の信仰の形…新派や旧派というような流派というのは…信仰としては誤っているのだと思います。
リン :…そう…ですか…。
リーリア :私には教会を変える力はありません…それに私達にこんな仕打ちをした人達も純粋な信仰を持つが故だと言う事も分ります…。でも、破壊が正しい事だとは思いません…貴女もそうでしょう?
リン :私は…ここで自分がやってる事が正しい事なのか…時々分らなくなります。
リーリア :それは…誰でも同じ。人は何度も迷うもの…。
リン :教会から見れば…私も多分異端者なのでしょう…。
リーリア :そうなのかしら…。
リン :私の家は…旧派です。
ですけど…私は、ああ言ったお金などの為に人を助ける…と言うのは…何か違うような気がするんです。ですけど…新派の場合も…何か違う…。
ですから私は…新派にも旧派にも属さない…やっぱり変なんですよね…。
リーリア :変だとは思いませんよ。貴女は…私の考えと似ている気がする…。
リン :そうなんですか?
リーリア :一つ聞いていいかしら?
リン :はい。
リーリア :貴女は…何故…信仰の道を選んだの?
旧派の家に生まれたのなら…教会の腐敗も目にしてきたと思うけど…?
リン :はい…。
私は私のできる事しか…いえ、私に授けられた力は…この力だけですから。
その力をもって…人々を救えるのであれば…私は…何もいりません。
リーリア :私達には…人を救うことが出来るのかしら?
人を救うのは神…。私達に出来るのは人を救いへと導く事ではなくって?
リン :確かに…そうですけど…。
目の前で傷付き…倒れる人がいればそれを助けるのは…当たり前の事では無いのですか…。
リーリア :(優しく微笑みながら)
そう考えているのならいいの…私も随分迷って来たから。
貴女に出来れば…早く道を見つけて欲しい…。
リン :いえ、今…こうして迷っている事こそ…私の道だと思います。
多分私は…死ぬまでずっと悩み続けるのでしょうね。
ただ…一つだけ…心に決めている事があります。
どんな人であれ…目の前で困っている人がいれば何を差し置いても助ける…それだけです。馬鹿なんですよね…私は…。
リーリア :そうは…思わないわ。けれど…。
助ける事が…その場で手を差し伸べる事が…本当にその人にとっての救いになるのかは分らない。だけど…貴女には救う事で迷って欲しくないの。
もし、それが良い結果を生まなかったとしても…救おうと…その人を助けてあげたいと思ったら、その時に貴女には迷わないで欲しいの。
リン :分りました。何か…分ったような気がします。
リーリア :貴女のような人に会えた事を嬉しく思うわ。
リン :それは私も同じです。私も…。
窓の外を見るとだんだん暗くなってきている。そろそろ日も落ちた頃だろうか…。
リーリア :もう日も落ちてきた事かしらね。
リン :あ…はい。
リーリア :ごめんなさいね…長話をしてしまって…。
リン :あと…一ついいですか?
リーリア :ええ。
リン :あの…。
幾ら異端と言われたとはいえ…何故…貴女様はあんな怪我を負っていらしたのですか?あれではまるで…拷問…。
リーリア :ええ…貴女のいう通りよ。
彼らにしてみれば私は…闇の魔神とでも契約した者にでも思えたのでしょう。
彼らには…きっと私の考えは理解できないだろうから…。
リン :そうですか…。
リーリア :だからと言って考えなおすつもりもないけどね。
リン :暫くすれば、あの方も戻られるでしょう。
リーリア :ごめんなさいね。お世話になって…。
リン :いえ…。私に出来ることがあれば…何でも言って下さい。
GM :それではここで一度シーンは切れます♪
次のシーンプレイヤーはシスティーナさん。
シャルアリスはこのシーンに登場判定成功。少ししてから出てくる事になる。
翌日システィーナがシャルアリスに会いに来たところである。
システィーナ:おはよ。
シャルアリス:おはようございます、姫様。おらになんか用だべか?
システィーナ:用が無ければこんな所まで来ないわよ。
シャルアリス:それもそうだべ。
システィーナ:貴方…何故その人を追ってるの?
シャルアリス:何故…?ああ、昨日の件だべか。
システィーナ:そうそう…依頼人はどんな人なの?
シャルアリス:依頼人…と言われましても…;おらが追ってるのは悪いウルフェンだからまぁ、そういう関係なんだべか。多分姫様の想像が当たってるだべ。
おらは旧派教会にいる友人に頼まれて…ウルフェンと、それを匿った魔神に通じた女を追ってるだべ。そう…旧派の友人に頼まれてるだべ。
先程のシーン。真剣に話をしているリーリアとリンの会話を、偶然にもドアの外でシスティーナは耳にしていたのだ。
シャルアリス:逆に姫様は何を知ってるだべか?
システィーナ:ふぅ…悪いウルフェンと悪魔に通じた女は知らないわ。
私が知ってるのは…可哀想な獣人と彼の事を一心に思ってる司祭だけよ。
ぽりぽりと額を掻いて眉をひそめるシャルアリス。
シャルアリス:じゃあ、おらとは関係ないだべ。
所でその…可哀想な獣人と、それを匿った女の子は、やはり新派の教会にいるだべか?
システィーナ:私と…貴方の秘密にして欲しいの。
シャルアリス:あれ…秘密と言っても、姫様が言ったのは可哀想な獣人とそれを庇った女の子だべよ。おらが探してる魔神に通じた女と悪いウルフェンじゃ無いだべ。
システィーナ:そうよ…ねぇ…。
シャルアリス:おらも…その友人、ヴィルというだべが…ヴィルに聞いた話しか知らないべ。
これから…旧派の教会に言って他の人に話を聞いてみようと思ってるだべ。
姫様も一緒に来るだべか?
システィーナ:そうね…そうさせて頂くわ。
シャルアリス:ちなみに…おらが思うに…。
ここ半日か一日余り、ヴィルに聞いた話を調べていたんだが…どうも話が食い違っているだべ。おらが追っているのは悪魔に通じた娘ッ子と、悪いウルフェンだべが…皆に聞いた情報は、それとは食い違ったものばかりだべ。
システィーナ:それは…可哀想な女の子達について話しながら行きましょうか…。
シャルアリス:姫様が知ってる事を話しながら行ってくれるなら大歓迎だべ。
おらが教会だとかに行っても…得られるものは無いだべから…。
どこまで伝えるべきか思案するシスティーナ。それを見てシャルアリスが言葉を続ける。
シャルアリス:そもそも姫様、おらは禄に字も読めないから…
システィーナ:まっかせなさい♪そう言う点に関しては自信があるから★
シャルアリス:姫様は天宮語や古典天宮言語も読めるだべか!真実の書も皆読めるだべ!
天宮語はエルフ達の言語、古典天宮言語は南のマテラ人の言語。
ともに、この舞台であるハイデルランド地方よりも文化水準の高い地域の言語である。
真実の書は我々の世界の聖書にあたる。
ハイデルランドとは異なる言語で書かれている為、聖職者か魔術師のような教育水準の高い人々でないと読むことはできない。
システィーナ:興味は無いからね、宗教関係は…。冒涜かと思われるかもしれないけどね。
そういうシスティーナを見てふっと笑い…シャルアリスは言葉を続ける。
シャルアリス:教会の活動について…おらは旧派、新派…分り易い所しか分らないべ。
システィーナ:神様っていうのは人の心の支えになればいいのよ。
シャルアリス:旧派を支えてるのは太ったおっさん達だべ。
システィーナ:冷静な突っ込みを入れないの!(笑)
シャルアリス:おらは村で育ったから…こんな事が言えるだべ。
おらの信じてるのは神様じゃなく…旧派のおっさん達だべ。
システィーナ:まぁ、その辺も…色々と難しいのよね。(苦笑)
シャルアリス:そんな難しい事は無いように思えるだべが…。
システィーナ:ともあれ今は…旧派の教会に行きましょう…。
システィーナは旧派の教会に到着するまでにハインやリーリアの事をシャルアリスに説明した。
リーリアが何故襲われたのかを…。
シャルアリス:おらも家業が長いから…こういうケースは珍しいが初めてでも無いべ。
旧派は…獣人と見ると疎外する事が多いだべから…。
システィーナ:ごめんなさいね…さっきは…。無い事ばかり言っちゃって…。
シャルアリス:あの時は…かまをかけていただけだべ。
正直に答えてくれるのを最初から聞いて無いべ。姫様、修行が足り無いべ。
システィーナ:貴方にそう言われるとは思わなかったわ。
シャルアリス:姫様…この口調だと気を緩める奴は多いだべよ♪
システィーナ:貴方…宗旨変えした方が良いわよ。(苦笑)
シャルアリス:おらは…旧派と新派の違いは…良く分らないだべから…。
GM :という事でお二人が移動したという所でシーンは一度切られます。
では…ラヴィーネさんのシーンです。
貴女は今、朝食を食べながら宿屋の下の酒場にいます。
フィレンシアは登場判定に成功。
そのまま魔器人化(人の姿に変化)をして、酒場に入ってくる。
ラヴィーネ :お帰り♪
フィレンシア:ただいま♪結局あの後…何も無かったわよ。
ラヴィーネ :良かった…。こっちの方は…特に何も無かったわよ。
あ…そうそう、剣匠卿にあった♪あのシャルアリスさん★
フィレンシア:う〜ん…;そうだったの;;
ラヴィーネ :くす…そろそろボク…行くけど?
フィレンシア:それじゃ、私も付いてく♪
そんな感じで旧派教会に行くラヴィーネとフィレンシア。シーンはここで一度切れる。
GM :それでは次はシェイルさんのシーンです。
教会内にはリンがいるので、シェイルはハインのいる街外れに一人で歩いて来た。
追っ手のかかっている以上、ハインがこの場に居ない事も充分考えられたのだが…。
シェイル :さて…ハインさんはちゃんとこちらに居るでしょうか…?
この街外れに来る途中に、異端審問官達がハインの情報をどれ程集められたのか…。
あたりを付ける為、街の人々に話を聞いてからこの場に来たのだが…。事情通で両方成功。
ハインは街の方に向かっている様であり、異端審問官達は街のパトロールをしている、という程度の情報は聞き取る事が出来た。
今のところは捜査網が拡大しているものの、ハインの情報が漏れた様子はなかった。
街外れの丘に、出来るだけ一目に付かない様に移動して…朝の街を通り抜け…ハインの居る所まで来た。
彼は木の切り株に何事も無かったかのように座っていた。
丘から下の街を見下ろして…何か考え事をしているようだった。
シェイル :ここに居たんですか…。
ハイン :ああ…来たのか、おはよう。
シェイル :リーリアさん…目を醒ましましたよ。
ハイン :そうか…
シェイル :それを伝えに来たんです。
ハイン :ありがとう…良くここが分ったな。
シェイル :貴方は…こう言っては何ですけど、目立ちますから。
ハイン :そうか…すまないな。
シェイル :いえ…。まぁ、私の好きでやってるんですから。(苦笑)
ハイン :しかし…いざ、目を醒まされると…迷ってしまう物だな。
シェイル :とは言え…彼女をこのままにしておく訳にもいかないでしょう?
それに…約束したでしょう?目を醒ましたら会いに行くって…。
ハインは少し黙って…街の方を見ながら何かを考えているようだった。
シェイル :ただ…迷っている様なら…会った方がいいですよ?
ハイン :俺の事を…もう嗅ぎ回っている連中が来てるんだな。
シェイル :余り時間はありません…いつ…異端審問官達がくるとも限りませんから…。
ハイン :しかし…彼女はまだ…引き返す事が出来る。悔い改めたと言って、俺の事を忘れれば…。
彼女がそんな事をする娘では無いのは分っているが。貴女達が言い聞かせてくれれば…あるいは…。
シェイル :多分、貴方の話を聞いていますと…。
リンとは別の意味で、彼女も信念の人みたいですから。そうでなければ…貴方を匿ったりする事は出来ません。
ハイン :しかし…分らなくなって来てしまったんだ。俺のした事は正しかったのか…。
助けた時はただ夢中だった。あのまま居たら、彼女は殺されてしまうと思ったからな。
けれど彼女は、自分を傷付けた連中の死まで悲しんでいた。
シェイル :優しい人なんですね…少なくても私とは違って…。
ハイン :俺も思えば…彼女を傷付けていたのかもしれない…。
シェイル :けれど彼女は…例えそうだとしても貴方が帰って来る事を望んでいます。
ハイン :彼女も…望んでいるのか?
…分った…もう一度会う。そして彼女の意思を聞く。
シェイル :それ以降は…貴方達で決めてください。
部外者である私達が出来るのは…ここまでですよ♪
ハイン :わかった…ありがとう…。
シェイル :さて、お礼を言われるような事…何かしましたか?
ハイン :つくづく人が良いな…貴女も。
シェイル :貴方も分りますよ。一度…自分のいた世界が無くなってしまうのを体験すれば。
……それじゃ、行きましょうか♪
ハイン :ああ…。ただ…そんな思いをしたいとは思わないな。
シェイル :ええ、こんな思いはしないのに限ります。
ハイン :今の俺にとって世界を失うというのは彼女を失うという事だからな。
GM :そして2人が街に向かって歩き出した所でシーンは切れます。
シャルアリスはこのシーンの舞台裏で、ショートスピアとラージベルトを購入。
戦闘中に武器が破壊されても良い様に予備武器を購入したのであろう。
通常グレートソードなどの大型武器は、肩に担いで持ち運ぶしか方法がないのだが…ラージベルトがあれば、動きが少々不自由になる反面、常に担ぐ必要もなくなり片手をふさがずにすむ。
GM :次は、移動中の人が多いので旧派教会のシーンです。
シーンプレイヤーは旧派教会に行った人の中で鎖が最も少ない人、システィーナさんのシーンです。教会の司祭達が皆で集まって話をしています。
ウェルも戻って来ているようです。
ヴィル :おや…これは随分とぞろぞろと;
ラヴィーネ :おはようございます♪
シャルアリス:やあ、ヴィル。そちらは何か分った事があるだべか?
ヴィル :ああ、俺はこれからまた外に出ようと思っている所だ。ところでそちらは?
ラヴィーネ :えっと、旅の者ですけど…ラヴィーネっていいます。
システィーナ:初めまして、システィーナと申します。
ヴィル :ああ…シャルアリスの知り合いか?
シャルアリス:ああ、おらの所の領主の姫様だべ。
シャルアリスにそう紹介され、ぺこりとお辞儀をするシスティーナ。
ヴィル :これはどうも。
ラヴィーネ :ボクの方は一緒にお食事とかしたんで…街の噂は、耳にしたんですけど。
ヴィル :ああ、色々と…噂は出回っているからな。
シャルアリス:多分、おらの聞いた話とヴィルが聞いた話は同じ物だと思うだべ。
おらも、街の噂を聞いてここに来たんだべ。
ヴィル :それじゃ、聞いた事を報告してもらおうか?
横に居る旧派教会の司祭達が一斉にメモを取る準備を始める。
ラヴィーネ :ボク達も…聞いて良いんですか?
シャルアリスは街で聞いた話(事情通判定で得た情報の事)のみをここで話した。
その情報は先のシーンでシェイルが得た物と大体同じである。
シャルアリス:野宿でもしている可能性が高いと思われるだべ。
システィーナ:ウルフェンですものね。
ヴィル :先程…街にいた者から情報が入ってな。街外れの丘の方で休んでいる獣人が居るという報告があったんだ。
シャルアリス:決まりだべな。
ヴィル :ああ、同行してくれるか?
シャルアリス:その為におらは協力してるだべ。
ラヴィーネ :すいません、少し御伺いしても宜しいですか?
ヴィル :ああ、構わないが。
ラヴィーネ :その獣人の方って何かしたんですか?
ヴィル :そもそも獣人は闇の眷属、それにその獣人を匿った異端の司祭…。
その女こそ魔神に魂を売り払った者だろう。その女を逃がす為、そいつは牢を破り門番を殺し脱獄した。
シャルアリス:つまり、その<うるふぇん>は人殺しの重罪人という訳だべ。
ラヴィーネ :それじゃあ…何故、牢に閉じ込められたんですか?
ヴィル :匿ったのが…何しろ司祭だったからな。
ラヴィーネ :獣人の方が…です。
ヴィル :司祭が闇の眷属を匿ったというのは重大な事件だ。
闇の鎖が関わっている可能性がある。
シャルアリス:待つだべよ。ヴィル、ちょっと脱線してるだべ。この娘っ子が聞いてるのは、その獣人が元々何故牢に入っていたかと言う事だべ。
ラヴィーネ :本当に…闇の者だったんですか?
ヴィル :獣人というのは…。
ヴィルは言葉を続けようとするが、ラヴィーネに遮られる。
ラヴィーネ :少なくてもボクには、彼らは一緒に戦ってくれた大切な仲間だったんです。
…獣人だけじゃない、結局あちこち旅をして傭兵のような仕事をしていれば色んな人に会います。
シャルアリスはシスティーナに目配せをする。どうやら話があるようである。
ラヴィーネ :そうした中に獣人、いわゆるフルキフェル…は大勢居ます。
その人達は闇どころか強い光を持っていました。
ヴィル :君は…『真実の書』を読んだことは無いのか?
ラヴィーネ :ありますよ。
ウェル :それなら、この記述は知ってる筈だ。
そう言うと彼は真実の書の、ウルフェンが救済の日にその席が用意されていないという記述を暗唱する。
ヴィル :『獣以外の全ての人は等しく救われる』…獣は許されぬ者、そうゲリトリウスの書には記されている。
ラヴィーネ :そうなんですか。
ゲリトリウスの書にそう記されているからこそ、彼らは一生懸命頑張っている。
そう言う風に見てはあげられないんですか?
ヴィルは聞き分けの無い子供の相手をするような、そんな表情を浮かべた。
ラヴィーネ :それに、人間の中にも悪い事をする人は居ます。
そうした人が悔い改める為に労役を課せられたりはするでしょう。ですけど、獣人たちは無いんです。それが…。
ヴィル :…罪というのは2通りある。犯罪と罪業だ。犯罪は償えもするだろう。
だが罪業は神への冒涜。
ラヴィーネ :それって・・原罪ですよね。
ヴィル :そうだな、それも含まれる。
ラヴィーネ :それを言ったら…ボク達、皆がそれを持っているじゃないですか。
彼らだけが責を負うべきだという考えは間違っていますよ。
ヴィル :誰もが罪を背負っている。そしてそれを償う為に生きているのだ。
しかし…闇に生まれた者には償うという概念は存在しない。
殺戮者というものを知っているだろう?彼らにも償う事は出来ると思うのか?
ラヴィーネ :彼らがそれを望めば…。
システィーナ:そろそろ止めませんか?お互いにわかり合えないでしょうから。
ラヴィーネとヴィルが議論している間に、シャルアリスはシスティーナに小声でこう告げていた。
シャルアリス:おらはヴィルと一緒にその獣人を追うから…。
姫様はまず、その獣人が何故捕まって投獄されていたのか、その女性と獣人はどうやって出会っていたのか?その女司祭と獣人は、どういう扱いを受けていたのか、どんな誤解があったのかを、この教会で聞いてもらいたいだべ。
システィーナ:わかったわ。
シャルアリスは、今行なっているラヴィーネ達の宗教論議が、この場では時間の浪費に過ぎないと判断したのか、ヴィルにそう告げてヴィルを連れ出した。ラヴィーネはシスティーナから同じ様な事を告げられた。
ラヴィーネ :結局、ここでこうしていても始まらない。
ボクはボクなりの方法で今起こってる事に関しての真実を知りたい。
だからこの場を去ります。
ヴィル :そうか・・・。
ラヴィーネ :でも、アーそのものを否定している訳じゃ無いです。
その事は…分ってください。
ヴィル :それは分っている。
シャルアリス:ヴィル、ヴィル!!娘っ子と話していないでおら達は早くいくべ。
おら達には他にやるべき事がある筈だべ。
ラヴィーネ :引き留めて申し訳ありませんでした。失礼します。
ヴィル :そう急かすな。…まぁ、そろそろ行った方がいいのは確かだが。
ラヴィーネ殿と言ったな。君がアーの教えに関してどう考えているかは俺には分らない。少なくても斬るべき敵を前にした時には、その称号に恥ぬ戦いを見せてくれ。
そう言ってヴィルはシャルアリスを連れて教会から立ち去る。
その後姿を見ながら…呟く様にラヴィーネはこう言った。
ラヴィーネ :そこで迷うようであれば…ボクはこの称号に相応しく無いですから。
システィーナ:さて、始めますか…。
システィーナはウェルに協力している側として、シャルアリスに提案された事について旧派教会の司祭達に聞き込みを始めた。その時にラヴィーネの頭に声が響いた。
フィレンシア:どうする、ラヴィーネ?
ラヴィーネ :ハインさんは丘に居るって言ってたけど…。
ここまで話が分ったなら、大急ぎで丘まで一度見に行ってみて…居なかったらまた戻ってこよう。
フィレンシア:分ったわ。それじゃ、私も手伝うわね。
…それにしてもさっきの貴女は格好良かったわよ♪
ラヴィーネ :ボクは思った事を言っただけだよ。
システィーナが聞いたところによると、旧派教会はウルフェンを闇の者と見なしているらしく、ウルフェンという事が判明した時点で、捕まえたり殺したりという行為をしていたようである。
しかし旧派真教でも、ただウルフェンであっただけで即死刑というのはそれ程一般的ではない。
これはどうやら急進派の組織が取り仕切っていた行動と思われる。
そして同様にハインを捕まえようとしたところ、リーリア司祭が自分の教会に彼を匿った。
その事実が発覚し、リーリアは異端と見なされ、投獄されたのだった。
それまで、彼女が異端であるという事を匂わせたことはなく、何故、彼女が突然その様な行動にでたのかは不明である。が、旧派真教の司祭が闇の者に組したというのは、充分な醜聞である。
その情報を引き出す為、本来ならすぐに殺されるはずのハインを投獄していたようである。しかし、隙を見て脱獄し、彼女を連れて逃げたという。
ヴィル司祭は非常に熱心な旧派真教の司祭である。彼は異端審問官という地位に就いているが、剣の腕や熱心な勤務態度が見込まれて異端審問官に任命されているので、経歴に後ろ暗い事があるわけではない。普段は人当たりの良い青年であるらしい。
GM :次のシーンはシェイルさんのシーンです。丘から新派真教の教会に行く途中で他の人も登場できます。
リンとシェイルを除く全員が登場判定に成功。ヴィルがハインの姿を確認して剣を構えます。
ヴィル :遂に見付けたぞ!闇の眷属め!!
シェイル :さて…遂に見付かってしまいましたね。どうします?
ハインは背中の鞘に入った剣を引き抜くとその剣を構えた。
ヴィルはハインとシェイルを見てシェイルにこう告げた。
ヴィル :この男の協力者か?
シェイル :さて、どう思われようと結構。
それにどうせ、私の話など聞く気はないでしょうから。
ヴィル :それは、そちらも同じ事。
シェイル :ですね。少なくてもウルフェンだから獣、そして獣には救いの道がないから殺すなどと言ってる貴方にとっては交渉など無駄な事でしょう。
ヴィル :お前も、異端の思想にかぶれている様だな。
シェイル :まぁ、旧派の方から見れば新派は全て異端と言う事になりますからね。
まるで憐れむようにヴィルを見て苦笑しているシェイル。
ヴィル :新派が全て異端だとは思わんが…。
少なくとも、そう声高に他者の信仰を否定する者は異端だと思う。
シェイル :まぁ…どちらにしろ、この人にはやる事がありますから…貴方の好きにさせる訳にはいきませんね。
ヴィル :それでは…どうするというのだ?
シェイル :さぁ?貴方がここで通してくれるなら何もしませんけど?
ヴィル :俺がそうすると思うか?
そう言うとヴィルはシェイルに剣先を向けた。シャルアリスもグレートソードをハイン達に向ける。シェイルは煙幕弾を気づかれない様に防火蓑の中で両手に握った。
しかしヴィルには、シェイルが何かを隠し持っている事はわかったらしい。
シェイル :いえ、そうは思いませんけどね。
ヴィル :何を持っている?
シェイル :さぁ?別に貴方にそれをいう気は有りませんよ★
ヴィル :邪魔をするというならしてみるがいい!
そう言ってヴィルはハインに間合いを詰めて走り寄る。
その間にシェイルはハインに小声でこう告げる。
シェイル :煙が出るから…急いで走って、そのまま隠れてください。
ハイン :断る!
シェイル :貴方も頑固ですね。私なら…彼らを殺さずに倒す事も出来る。
ハイン :それは…返討ちにあうだけだぞ。
その間に間合いを詰めるシャルアリス。
シャルアリス:後で聞こうと思っていたのだが…ヴィル、お前…ウルフェンに恨みでもあるだべか?
ヴィル :恨み…別に無いが。
シャルアリス:(内心で)なら…本当に任務の為だけだべな。
ハインはヴィルの方を向き、背中に背負っている剣を抜き放ち彼に剣を突き付けて告げる。
ハイン :引いてくれ。俺は死ね無いんだ。彼女に会うまでは…。
シェイル、済まない…彼女に会うために、ここは戦わざるを得ない。
シェイル :彼女を連れて逃げてくれといっても・・・貴方は聞いてくれそうに無いですね。
しょうがない人です…。
木陰の方からラヴィーネとフィレンシアが出てくる。
ラヴィーネはハインの片手を不意に押さえてこう言った。
ラヴィーネ :だとすれば…まず最初にこの後どうするか決めても遅くは無いでしょう?
ハイン :ラヴィーネ!
シャルアリス:と言う事は…フィレンシアもいるんだろう?
ハイン :ラヴィーネ…むこうに待つ気があるとは思えないが…。
ラヴィーネ :だったら…尚更…急いで行った方が良いんじゃないの?
ハイン :(溜息を付いて)このまま行っても、いずれ追い付かれて彼女に危害を加えるだろう…ならば…。
ハインの瞳に少し暗い光が宿っていく。
ラヴィーネ :そんな顔して…会ったことは無いけど…その人は喜ぶの?
ハイン :知らないならば…悲しませることも無い。
シェイル :いずれ…この事はリーリアさんの耳にも入ってしまいますよ?
悲しんだんでしょう?前に門番を殺した事を知った時も…。
ラヴィーネ :ボクは言っておくけど物事を内緒にしておくことなんて出来ないからね。
シェイル :じゃ…やりますか。
シャルアリス:ハイン殿、警備兵殺害の咎で一緒に来てもらうだべ。
ハイン :すまないな…今はそう言う訳にも行かない。
ウェル :話はもういいか?
シャルアリス:決着を付けるべ。
そう言うとすぐにヴィルは踏み込んでハインに向けて斬りかかる。
そして神速の一撃が直撃したとき、その剣には死神の力が宿る。
※【死神の手】が使用される。ダメージを+10D10にする、普通は即死する打撃である。
しかし、その剣が直撃してハインを傷付けようとする瞬間、シェイルの手から出た光の粒子に粉砕され、【死神の手】を発動することができなかった。
※ シェイルが【爆破】(任意の物品一つを破壊)を使用した為。
シェイル :言ったでしょう?斬らせないと…。
ヴィル :邪魔をするな!
シェイル :嫌です。
シャルアリス:ヴィル、少々厄介だ。この手勢では防げるかどうか怪しいぞ;
シェイルは手に持っていた煙幕弾2つを同時に地面に叩きつけ、一度に広範囲の煙幕を作り出す。
全員が煙に包まれて視界を封じられてしまう。
シャルアリスは剣から鎌鼬を出し煙幕を斬り付ける。そして一瞬だけだが、斬った煙幕越しに向こうが見える。そして視界を得た瞬間にシスティーナは言霊の力を操り、ハインと自分のいる場所を入れ替えてしまう。
煙に包まれた中、ハインとシェイルのいる光景がシャルアリスには見えていたのだが、ハインの姿が消え、かわりにシスティーナの姿が現れる。
シャルアリス:姫様…;
システィーナ:あら?私どうしてここにいるのかしら;
煙を晴らそうとしたら失敗してしまいましたわ;(確信犯である)
ラヴィーネは急いで街道を走り、街とハインの今いる位置を遮れる場所に行こうとする。
煙幕の効果で他の人は誰が何処に居るかわからないのだが、ラヴィーネには視覚障害を無効に出来る心眼(誰が何処にいるか気配で全てが分る)があるので、全く問題が無い。
ウェルが煙幕に戸惑っている中、ハインは全速力で街に向かっていこうとしているのが確認できる。
GM :という所でシーンが切れます。
次はリンのシーンです。新派真教の教会でリーリアと話をしていたのですが…先程使われたシェイルさんの奇跡【爆破】の為にリンさんの持っている聖痕が共振を起こします。(ちなみにリンの共振は恐怖を覚える)
そしてそれと同時に、リーリアの持っている聖痕も共振を起こし、光を発し始める。
その数、およそ15個ほどはあろうか…。
本来、選ばれた人間でも聖痕は3つしか保有できない。だが、神の使徒の、力の欠片である聖痕の力は、その身を闇に堕す変わりに…例えば、聖痕を保持している者を殺す事によって、3つ以
上の力を得ることができるという…。
それは「刻まれし者(PC)」達と対極にあるもの…闇の鎖の使者、「殺戮者」と呼ばれる。
リン :(信じられない物を見たので目を擦りながら)
…でも!例えそうだとしても、この人はわかってくれている!
リーリア :聖痕の共振が起こった様ね…。
リン :その様ですね;;
リーリア :どうしたの?
リン :いえ・・別に。
リーリア :聖痕は…母なるアーの使徒の力…救いをもたらす事が可能性を秘めた力…。
この力があれば…より多くの人々に救いの道を示す事が出来ます。
リン :そうですよね。使い方さえ…誤らなければ…。
リーリア :ええ…この力があれば…多くの人達を助ける事が出来る。
そう思うのは…間違いでは無い筈だから…。
そう言って彼女は無垢な微笑を浮かべてベッドから立ちあがります。
それを見ていたリンに「殺戮者」の悪徳の鎖が飛んでいく。周囲が邪悪な雰囲気で満たされる。
リン :あの…どちらへ?
リーリア :あの人が戦ってる…助けなければ…。
この様な共振が起こるのは滅多な事ではない筈ですから…。
リン :でも…あの、ご一緒しても宜しいですか?
リーリア :ええ…。ただし…貴女の信仰に迷いがあるようならば…来ない方がいいですよ?
GM :そのままリーリアが新派真教の教会から立ち去り、リンがその後を追ったところでシーンは切れます。という訳で…対決ステージに移ります。
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