■ はじめに

はじめて聖痕大戦を読む方へ

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◇ 1.聖痕大戦とは

聖痕大戦は、読者参加型小説です。
F.E.A.R.社より発売された『ブレイド・オブ・アルカナ』の世界を基礎に、オリジナルに構築された世界で、あなたがたが作り上げたキャラクターたちが活躍する、という企画だと御理解下さい。

◇ 2.参加するには

多数のキャラクター登録ありがとうございました。
必要なキャラクター数がプールされたため、登録は一時休止いたします。
再開の際にはアナウンスいたします。

◇ 4.聖痕大戦世界の状況設定

聖痕大戦のスタートは、西方暦一〇六〇年です。
公式設定同様、西方暦一〇五六年に勃発したツェルコン戦役が未だ続き、国境線周辺では、年中小競り合いが起きています。
ブレダ王国は《ハウトリンゲン侵攻戦》で消耗した国軍の再編成をようやく完結しかけ、この戦争にかたをつけようとしています。
エステルランド王国は大国であるための鈍重さ、旧態依然とした組織構造のための非効率、自己中心的な公国の思惑のために、効果的な行動を起こせません。
バルヴィエステ王国――正真教教会は己の権益拡大と救世母の栄光を拡大させるための活動を取り続け、エクセター王国ブリスランド王国も、ツェルコン戦役から最大の利益を得ようと蠢き、そして、自由都市ケルバーは、大国の思惑に揺さぶられ続けます。
あなたがたのキャラクターが生きるのは、そんなエゴが渦巻く世界です。

◇ 5.聖痕大戦世界の出来事

基本的に、聖痕大戦世界の歴史は公式設定とさほど変わりません(『ブレイド・オブ・アルカナ』コンパニオン"ロード・オブ・グローリー"のハイデルランド年表を御参照下さい)。リザベート問題については、現時点で保留しています。ストーリー展開によっては、どちらかを――あるいは第三の選択を――採用するかもしれませんが。
しかし、一つだけ公式設定と異なる事変が発生しています。
西方暦一〇五七年の"ヴィンスの狂乱"――ヴィンス公フェリックス・クリューガーによる叛乱です。
この事変後、クリューガーは行方不明になっています。その後ヴィンス公国は一時期混乱に見舞われますが、新興貴族カルルマン・テロメア侯爵の手腕により平定。一〇六〇年現在、ヴィンス公国はテロメア公国(混乱平定の功により、カルルマンは公爵位を与えられ、彼の地の統治権を引き継ぎました)と名を変えています。
"ヴィンスの狂乱"は、未だ作中でも語られていない事変です。
現時点では

  1. クリューガーがいない。
  2. ヴィンス公国はテロメア公国と名を変え、カルルマン・テロメア公爵が統治している。
ことにだけ留意していただければ問題ありません。

次に、各国の設定について御紹介しましょう。

◇ 6.聖痕大戦世界の国家

▽ A)エステルランド神聖王国

聖痕大戦世界においても公式設定同様、ハイデルランド地方で最も巨大な国力を持つ大国です。正真教――旧派真教を国教とし、教皇の推戴委任を受けて巨大な領土を統治しています。
神聖王国は七つの行政区分(ミンネゼンガー・ケルファーレン・アイセル・テロメアの三公国・一司祭領と、国王直轄の王室領、小領主が割拠する東方辺境領、そして二つの自由都市)に分けられています。以下に各地の詳細を説明します。

A―a)王室領
王室領はその名の通り、王室が管理する領土です。とはいえ名目上の存在であり、実情はハイデルランド併合戦争以来の譜代貴族に与えられた公国の支配下にない領邦を指します。
王都フェルゲンの周辺一帯はすべて王室領であり、ヘルマン一世に忠誠を誓う貴族が統治しているとお考え下さい。
王室領はおしなべてその領土下に大都市があり、活発な通商・交易などで莫大な税収を得ています。そのため王室領貴族が備える軍勢は大抵精強です。
アーネフェルト・フォン・ティーガァハイム伯爵、メイル・バームレイ・フォン・シーヴァース侯爵などが王室領に領土を持つ貴族です。

A―b)ケルファーレン公国
ハイデルランド地方西部にある公国領です。
公式設定同様、"紅公ガイ"――ケルファーレン公爵ガイリングが統治しています。
西海に面した海岸線には、公都にして港湾都市であるカルデンブルクを筆頭に幾つか天然の――あるいは人の手による良港が点在し、漁業基地としてはもちろん、バルヴィエステ王国、ブリスランド王国(場合によってはブレダ王国とも)などとの交易/運輸拠点として活発な活動を行っています。
この商業活動によってケルファーレン公国が生み出す交易収入/税収は膨大なもので、エステルランド神聖王国の生命線とも言えるでしょう。
交易収入を背景にしたケルファーレン公国の経済力は公国の中で最も強大で、豊かなものです。
ツェルコン戦役によってキルヘン川一帯に警戒部隊を配備していますが、大河で知られるキルヘン川を大部隊が渡河することは難しいため、他の公国に比べてそれほど大規模な軍勢を動員してはいません。
ケルファーレン公国の軍備の特徴として、独自の水軍を保有していることが挙げられます。これは主に西海に存在する海賊に対抗するためのものでしたが、近年のブリスランド王国との関係悪化を受けて増強が図られています。また一〇五九年度から試験的に水軍歩兵部隊――水軍陸戦隊の編成が秘密裏に開始されています。
ケルファーレン公国は経済が生み出す力のなんたるかを理解しており、ツェルコン戦役にずるずると引きずり込まれることでそれを減退されることをひどく警戒しています。
それを踏まえたうえで、色々なキャラクターや組織を設定してみるのもいいでしょう。

A―c)ミンネゼンガー公国
ハイデルランド地方東部、シュパイエル平地北部の公国領です。
農耕と畜産の第一次産業がメインでしたが、近年の錬金技術の向上、ツェルコン戦役の長期化による軍事関連物資の不足を受けて、プラウエンワルト・アルプス一帯の鉱物資源輸出/加工が主要産業となりつつあります。
しかし、ミンネゼンガー公国はツェルコン戦役においてブレダ王国の侵攻を幾度か受けているため(ザール川は場所によっては狭く浅い地点もあるため、キルヘン川に比べ大部隊の渡河が可能です。五六年のハウトリンゲン侵攻戦以降もブレダ王国は数度、ミンネゼンガーへ侵攻しています)、常に大規模の軍勢を動員せざるを得ません。
そのため、他の公国に比べ豊かとはいえない国力は疲弊しています。また、公国軍自体も弱体化しています。
恐らく、再度大規模な攻勢を受けた場合は国境線を守りきれないでしょう。
ミンネゼンガー公国内の貴族は慨して戦慣れした武人が多く、非常に豪毅な者が多いです。
また、錬金術の普及率も他国に比べて高く、〈金の鷲〉協会の支部も数多く置かれています。錬金術兵器が配備されているのも、ミンネゼンガー公国軍の特徴です。
なお、ミンネゼンガー公爵は現在のところ設定されておりません。もしかしたら、あなたのキャラクターが採用されるかもしれませんね。

A―d)テロメア公国
ハイデルランド地方南部の公国領です。
肥沃な大地を活用した穀倉地帯として知られ、エステルランド神聖王国の食糧庫とも形容されます。
五七年に勃発した"ヴィンスの狂乱"を受けて、現在は新興貴族カルルマン・テロメア公爵が治めていますが、領地的にはヴィンス公国から変更ありません。
公国の中で最も巨大な領土を持ち、食糧輸出による収益を基幹とした国力はここ一国だけでブレダと対抗できるほどです。またヴィンス公国時代からエクセター王国に対する"南の抑え"として王室から重視されていたため、優先的に資金援助を受けて軍備が充実しているのも特徴の一つです。
テロメア公カルルマンは開明的な貴族として行動しており、近年は効率的な公国軍を配備するための軍制改革や税制改革などを推し進めています。
巨大すぎるこの公国の動静は、今後のツェルコン戦役に多大な影響を及ぼすでしょう。
テロメア公爵は、有能な部下を積極的に登用することで知られています。公国内の貴族を登録するのも面白いかもしれません。

A―e)アイセル司教領
エステルランド神聖王国における正真教エステルランド修道会の権益代表、アイセル司教が統治する領土です。
建前では神聖王国内におけるエステルランド修道会の総本山ですが、実質的に正真教教会が支配する治外法権と化しています。
司教領は西海に面した海岸線に二つの港湾都市を持っています。交易を活発に行いはしますが、これが主要産業ではありません。
アイセル司教領は各国の金山・銀山、そしてバルノウ砂金地の一部から集めてきた塊を元に、ハイデルランド地方に流通させる貨幣鋳造を産業としています。
アイセル司教領は、ハイデルランド地方最大の金融センターなのです。また、利に聡い両替商たちもここに本拠を置きます。
ケルバーとは別の意味で、地方最大の情報集積地域とも言えるでしょう。
司教領には一般的な意味での貴族はおらず、正真教に帰依した聖職貴族が領邦を統治しています。
司教領軍備として聖領軍が存在しますが、実情はバルヴィエステから派遣された聖救世軍の派遣部隊です。従って、神聖王国の中で最も先進的な軍勢を保有していることになります(軍制については後の項目で説明します)。
#聖職関係者はここに関係したキャラを創ってみては?

A―f)東方辺境領
ハイデルランド地方東部、シュパイエル平地南部一帯を総称して東方辺境領と呼びます。
ここは公式設定と異なり、シュパイヤー辺境伯が代表して統治する辺境国ではありません。
ここは中小の貴族(子爵、男爵、王国神聖騎士)が割拠する地域で、最も勢力が大きいのが辺境伯アダルベルトが統治するシュパイヤー辺境伯領なのです。
併合戦争以降に爵位を与えられた新興貴族か、勢力争いに負け没落した貴族が領土を治めています。
治安は慨して悪く、匪賊や傭兵団が横行し、また小領主同士が領土を巡り抗争を繰り広げています。神聖王国も積極的に平定する意志もなく(それどころか、忠誠心に疑いのある貴族を積極的に追放し、力を衰退させるために利用しています)、余程大規模な争いにならない限り介入しようとはしません。
東方辺境領は、あなたがたのために開かれたフロンティアです。貴族を登録するには好都合でしょう。
積極的に領地を設定して下さい。

A―g)王国自由都市
現在、エステルランド神聖王国領内には二つの自由都市が存在します。
一つは、神聖王国とブレダ王国の二大国に挟まれた地域に存在するケルバー
ケルバーは四つの河川が交差する地点にある大都市で、河川交易を活発に行い、ちょっとした貴族なら吹き飛ばせるぐらいの経済力を誇ります。希代の政治家・外交家である城伯リザベート・バーマイスターを領主に戴き、都市国家でありながら互角に大国たちと渡り合っています。
ケルバーはラダカイト商工同盟の巨大な影響力を利用した情報収集力、経済力を背景に、常に大国から生き延びるための策略を練っています。しかしツェルコン戦役の緊張感が高まる昨今、ブレダ王国による侵略が避けられない状況に陥りつつあります。
現在、ケルバーは軍備増強のために傭兵を掻き集めています。

もう一つの王国自由都市が、プラウエンワルト・アルプスの麓にある要塞都市国家ロイフェンブルクです。
ロイフェンブルクは聖痕大戦世界のオリジナル設定であり、未だ詳細は決まっていません。
決定しているのは

  1. プラウエンワルト・アルプスの豊富な鉱物資源の輸出/加工を主要産業としている。
  2. 先進的錬金術を独自に研究・開発する意志を持ち、積極的に利用し、他国にはない高性能な武具・防具・兵器を製造する能力を有している(〈金の鷲〉協会とは表面上友好関係にありますが、その支配下に降りるつもりはありません)。
  3. 自主独立の気風が強く、また勇武を尊ぶ。従って軍備は都市国家レベルを超えている。
  4. 温泉地としても有名。
  5. ザール川を通じて、ケルバーとは交易関係にある。非常に有効的。
――といった程度です。
詳細については積極的にみなさんの設定を採用するつもりでおります。

▽ B)ブレダ王国

有能な支配者、ガイリング二世を戴く軍事国家です。
聖痕大戦世界においても公式設定同様、新派真教を国教として宗教戦争を名目に一〇五六年にハウトリンゲンに侵攻し、これを併合しています。公式設定にない部分を付け加えるとするならば、ハウトリンゲン侵攻以後も何度かミンネゼンガー公国に対して侵略行動を取っている程度でしょうか。
聖痕大戦世界においては、ブレダ王国領土は《本領》と《北方領》の二つの行政区分を採用しています。

B―a)ブレダ王国本領
旧ハウトリンゲン公国は併合以降、王国本領と呼ばれています。
本領はブレダ国王ガイリング二世が直接統治しています。
これはオクタール族活動領域に比べ旧ハウトリンゲン公国領土の方が社会資本が充実しており、国家統治が円滑に行えるためです。
本領においては旧ハウトリンゲン公国の人材も積極的に登用されており、エステルランド神聖王国に比べ年齢に関係なく能力があれば若くとも国家の要職に就けられています。
ケルバーを介した交易も行いますが、ブリスランド王国との交易が近年の国家財政の主軸となっています。
ブレダ王国本領は、建国直後から国家計画として《ドラッフェン・プロイエクト》と呼ばれる一大公共事業を推進しており、王都ドラッフェンブルクを含む旧ハウトリンゲン公国内の都市改造・道路網整備などを行っています。
基本的に本領内の領土――ブレダでは領国と呼ばれます――は、《ハウトリンゲン侵攻戦》で軍功を挙げた軍人に対して任されています(与えられるのではありません。管理だけです。ブレダにおける貴族は領主よりも高級職業軍人を意味します)。

B―b)王国北方領
本領に対して、かつてのオクタール族の領土――ニーンブルガーハイデは北方領と呼ばれ、ニーンブルガー公爵家の管理下にあります。領土の広さからいえば、本領の数倍にもなりますが、その名が示す通り(ハイデは荒野を意味します)、決して豊かな土地ではありません。農業・工業ではなく、馬の産地として成り立っています。
ニーンブルガー公爵はブレダ王国建国後に創られた貴族位で、オクタール族長の血筋に当たるものが継承する、いわばガイリング二世からの名誉称号のようなものです。
現当主はガイリング二世の従兄妹のライラ・レジナ・ディアーナ・ニーンブルガー。
ニーンブルガー公爵は北方領に関するほとんどの権限を有し、副王にも似た存在です。
北方領にはオクタール族に連なる者や、若手の軍人が爵位を与えられ領国を管理しています。
これは常に北方領が北狄の圧力を受けているためで、有能な軍人に国境線を防衛させようとしているのです。
北方領軍は戦慣れした軍団として知られ、ハイデルランド地方有数の精強さで知られています。

▽ C)バルヴィエステ王国

ハイデルランド地方で最も古い歴史を誇る宗教国家です。
その変遷は基本的に公式設定と変わりはありませんが、聖痕大戦世界ではより詳細に設定されています。長ったらしく説明するのも何ですので、とりあえずは「公式設定よりは正真教教会が国王よりも強大な権限を有している(表向きの元首はもちろん国王ですが、教皇の同意なしでは何も行うことはできません)」と考えていただければ結構です。
貴族も存在していますが、全員が信仰を表明しているか帰依しています。
国王・行政府・貴族はお飾りで、正真教教会とその官僚組織たる聖典庁(これはオリジナル設定ですが)が国家を掌握しています。
聖痕大戦世界の特徴として、バルヴィエステ王国は国軍のほかに、教会直轄の常設志願制国民軍《聖救世軍》が存在します。
建前上、バルヴィエステ王国(正真教教会)はエステルランド神聖王国に宗教的影響力以外は及ぼせませんが、実質上はアイセル司教領を通じて影響下に置こうとしています。

▽ D)エクセター王国

ハイデルランド地方の南方にあるワイト族の国家です。
現時点で言えば公式設定と同様、としか言えません。逆に言えば、補足する形であなたがたが設定を絡めても構いません。
新派真教を国教とし、現国王のクリストファー二世はブレダ国王ガイリング二世に対して友好的です。
必要とあらばブレダ王国と同盟を組み、ツェルコン戦役に参戦する意志があります。

▽ E)ブリスランド王国

西海に浮かぶゲール島の国家です。
ここもエクセター王国同様、公式設定とさほど変わらないとしか言えません。ただ付け加えるならば、聖痕大戦世界ではエクセター王国ほどエステルランド神聖王国に対して敵対的ではないと言えるでしょう(もちろん経済的対立はありますが)。
国教は新派真教です。また、海洋国家の常として海洋貿易に国家としての活路を見出しており、軍備は海軍力を主力に増強されています。
近年は通商条約のもつれから、エステルランドとの関係悪化が進んでいます。

◇ 7.軍制について

聖痕大戦世界はその名の通り「戦争」がストーリーの重要な一角を占めています。
従って、各国の軍事的側面についても公式設定よりも詳細に設定しております。
ただし執筆者の妄想(笑)のため、中世的世界では絶対にありえない制度や、部隊規模で創られていることを先に記しておきます(すいません、万単位の兵が衝突する戦争が書きたかったんです)。
可能な限りのへ理屈を付け加えてはいますが、それでも納得いかない方にはもうごめんなさいと言うほかありません。広げすぎた風呂敷を笑って下さい。

それでは、各国の軍事機構について説明いたします。

▽ A)エステルランド神聖王国軍

神聖王国軍は、非常に非効率な軍制となっています。軍事力を一元管理する統帥機構が平時には存在せず、貴族はそれぞれ独自に軍事力を保有しています。友好国にして軍事先進国であるバルヴィエステ王国から軍制について学んでおり、近年は改革が進んでいますが、依然として効率の悪さは否めません。また、兵術の面においてもハイデルランド併合戦争時から進歩しておらず、未だにだらだらとした大会戦による決戦主義を標榜しています。
――さて、神聖王国軍は、大きく三つに分けることができます。
正規軍・公国軍(領軍)・王国軍です。

A―a)正規軍
正規軍は、神聖王国が常備している国王直轄軍を指します。
正規軍は国王(と、その意を受けた騎士団長)以外の指揮を受けることはありません。そう言った意味では、親衛隊と表現もできるでしょう。
また、正規軍は《エステルランド神聖騎士団》と呼ばれることもあります。
叙勲を受けた神聖騎士たちは(全員ほとんど、男爵以上の爵位を持つ貴族ですので)忠誠の証として、己の領軍から何割かの部隊を割いて正規軍に編入させます。神聖騎士団の定員は八八名ですから(時代によって規模は変わりますが)、正規軍の兵力は平均して三〇万程度。これが国防の中核・正規軍です。平時における国軍はそのまま、正規軍を意味します。これを動かすことができるのは国王か神聖騎士だけです。
おわかりですね? "神聖騎士"たちが率いる領軍の"集合体(=正規軍)"もまた《神聖騎士団》と呼ばれるのです。
またこれは決して表沙汰にはされませんが、聖救世軍(後述)から派遣された一部隊も、軍事顧問団として正規軍に編入されます。

A―b)公国軍(領軍)
爵位を持つ者はすべからく、己の領地に見合った軍隊、即ち領軍を保有することが許されます。これは己の領土の治安を維持するためで、いわば警察力です。匪賊討伐、魔物退治などに動員されるのもこれです。
公爵も同様に己の領軍を持っています。しかし、公爵領軍=公国軍ではありません。
公爵領軍を含めた、公国内領邦の領軍の総体が"公国軍(ただしアイセル司教領軍だけは独自に"聖領軍"と呼称)"です。この公国軍は平時においては公爵が指揮します。
公国軍は平均して一〇万前後の兵力となります。

A―c)王国軍
王国軍は、戦時にのみ編成されます。
国家規模の敵が現れると、神聖王国の軍事統帥組織《王国軍令本部》が"国王の意を受け"て作戦指導を行います(実質的には軍令本部が指揮します)。
そして国王の命令によって王国領内の軍隊が招集され、王国軍が編成されるのです。
王国軍は正規軍と公国軍のほかに、戦時徴兵によって急遽編成される王国近衛軍、金に飽かせて掻き集められる傭兵軍を含めた軍勢の総称です。
エステルランド神聖王国が後先考えずに王国軍を編成しようとすれば、二〇〇万近い規模になるでしょう(もちろんそんなことをすれば、国が壊滅しますが)。

まとめましょう。

です。

▽ B)ブレダ王国騎兵軍

ブレダ王国は、国軍のことを"騎兵軍"と呼称しています。
これは騎馬民族たるオクタール族の誇りから来ているとも、単純に騎兵を主力にしているからとも言われています。
ブレダ王国騎兵軍は、エステルランドに比べ効率的な軍事組織を持っています(そうしないと国力が持たないのです)。最大の特徴は、平時からしっかりとした軍事統帥機構が機能していることでしょうか。王国騎兵軍は常に《騎兵軍指導本部》の一元管理下にあり、機動的運用が図られています。
その運用について説明しましょう。

B―a)竜盾騎士団
まず国王直属の国家騎士団として竜盾騎士団が存在します。これは我々が連想する"騎士団"の語義通りの存在です。エステルランドのように、己の領軍を差し出して……といったことはありません。
国王警護の親衛隊であり、また未来の将軍候補(エリート将校)の集団です。
戦時には、竜盾騎士は前線指揮官として異動させられることもあります。
つまり、戦闘集団としての騎士団ではないのです。将校団……と言ったほうがいいかもしれません。

B―b)北方領軍
王国騎兵軍のうち、北方領内の領国に派遣された軍勢が北方領軍と呼称されます。
ブレダ王国軍事機構の優れた点ですが、貴族が独自に軍勢を徴兵することはありません。王国騎兵軍指導本部が国防に足る兵力を責任をもって徴兵し、それから貴族の管理する領国に対して軍隊が"派遣"されるのです(もちろんその際、徴兵された兵士の出身地に可能な限り派遣されるように図られますが)。
この方式は、貴族が独自に領軍を保有するのとさして変わらないように見えますが、非常に柔軟な運用が可能になります。一例を挙げましょう。
F子爵の管理する領国に、匪賊が出たとします。当然F子爵は討伐のために軍勢を派遣します。交戦。匪賊は思ったよりも強力で、討伐軍が兵を何割か失って後退しました。
さあ、兵を補充しなければいけません。
エステルランドならF子爵は、再び己の領内で兵を徴兵し、鍛え、討伐軍に送らなければなりません。隣の領邦から兵を借りられるわけがありません。隣の領軍は、その領邦君主のものだからです。手間がかかり過ぎです。
ブレダの場合だと、F子爵は指導本部に連絡するだけで済みます。指導本部は了承し、隣の領国に伝令を出します。これこれこういう状況により、軍勢を派遣せよ。あら不思議、隣の領国は、軍勢を派遣します。その領国軍は、自分の所有物ではないからです。ただ、管理を任されているだけだからです。
人口も国力も、エステルランドに比べ小さなブレダ王国は、このように限られた資源・兵士を弾力的に活用しているのです(ちなみにこの制度は、聖救世軍を除けばブレダ王国だけが採用しています)。
……話がずれましたね。北方領軍は北狄に対抗するために編成されている軍で、総兵力は四〇万になります。司令官は北方領姫ライラこと、ニーンブルガー元帥です。

B―c)本領軍
これも多くの説明はいらないでしょう。王国騎兵軍のうち、本領に派遣されたものが本領軍と呼称されます。その統率は、ガイリング二世が行います。規模は二〇万。

この北方領軍と本領軍の総体が王国騎兵軍です。

▽ C)聖救世軍

正真教教会が保有する軍勢は、聖救世軍と呼ばれています。厳密に言えばバルヴィエステ王国軍とは別物なのですが、一般的には同義語として用いられています。
ハイデルランド地方で随一の伝統を誇り、その血塗られた宗教闘争を生き残った聖救世軍は世界で最も先進的な軍制を敷いています。
公式設定の"聖救世騎士団"を果てしなく拡大したものと考えて下さい。
その最大の特徴は、世界で初めての常設志願制国民軍ということです。
詳細については設定資料の聖救世軍を御確認下さい。

登場がまだ先なので、ブリスランド、エクセターについては説明を割愛します。
あるいはみなさんが設定を提案しても構いません。その際は、メールにて御一報下さい。

◇ 8.聖痕大戦世界オリジナル設定

さて、最後です。
ここでは、執筆者がオリジナルで作成した組織について説明したいと思います。

1)聖典庁
バルヴィエステ王国の説明で登場しましたが、これは正真教教会の下部組織です。
世界各地への伝道を管理する官僚機構であると同時に、世界最大の諜報組織でもあります(イエズス会のようなものです)。
傘下に

  1. 布教と情報収集・密偵活動を監督する「伝道局」
  2. 教会祭儀の管理、列聖者の調査及び追叙、刻まれし者の捜索を監督する「列聖局」
  3. 真実の書の民衆向け出版、暦の作成、歴史記録を担当する「聖典局」
  4. 元力・秘義魔法・言霊・魔術の研究、救世母の預言調査、とりあえず不思議なことは全部調べる「預言局」
  5. 背徳・背教・殺戮者の捜査・調査・処分を担当する「信仰審問局」
  6. その他人事、会計、庶務等々の後方支援担当の「総務局」
などがあります。

2)宮廷魔導院
エステルランド神聖王国が持つ防諜組織にして秘密警察です。
基本的な任務は国内に潜入する密偵の調査・逮捕・処理ですが、他国への諜報活動・破壊工作や国内貴族への内偵捜査なども行います。

3)王立諜報本部
ブレダ王国における「宮廷魔導院」です。

◇ 9.最後に

駆け足になりましたが、たぶん『聖痕大戦』についての初歩的な知識を知っていただけたと思います。
「中途半端だ、この野郎」と思った方は、遠慮なくメールで御質問下さい。
可能な限り御返答します。あるいは「はじめての聖痕大戦(その2)」を創るかもしれませんが(笑)。

また、一つ御理解していただきたいのは、設定の穴のように見受けられる場所は、逆に言えば「あなたが設定をはめ込む」ものでもあるということです。
みんなで、世界を構築できればいいなとも思っておりますので。

それでは、次は『聖痕大戦』世界においてお会いしましょう。