聖痕大戦 "ブレイド・オブ・アルカナ" アナザーストーリー
Another Stories of "Blade of Arcana" Extra ARMAGEDDON
序章
00『緊急報告』
「戦争とは優越せる生命におけるただ一つの永続的形態であり、国家とは戦争のために造られた組織にほかならぬ」
─―オズヴァルト・シュペングラー
「彼らが戦争を起こす主な目的は要求事項の貫徹であって、それさえ前もって得られたらいたずらに戦争手段にまで訴えることはない」
─―「ユートピア」トマス・モア
「名誉心と義務感は、それがどれほど素晴らしく思われても、所詮は狂気の一種でしかない」
─―アンドルー・ヴァイアラス
「いいかね、君。おぼえておきたまえ」
アウエルシュタット伯は陽光に照らし出された酸鼻極める眼前の情景を見詰めながら言った。
「たとえどれほど兵士が疲れ切っていたとしても、敵の機先を制することさえできれば、気まぐれな女神はおのずとそれにふさわしき者へと微笑む。それを知ることこそ、将帥たる者の最大の責務なのだ」
─―「戦場随想」モーリス・ロシェール
「我々が戦うべき戦争に正義や誇りはない。英雄もいない。誰も彼もがあの不幸な少女たちと同じだ。誰にも看取られることのないまま死にゆく贖罪羊なのだ」
─―フェルクト・ヴェルン
西方暦一〇五九年九月七日正真教教会機密信60/全五部のうちの第三部
霊媒伝令網『福音』あるいは『聖鐘』にて伝達
機密区分《教会神聖機密》/教皇祭務補佐官級以上のみ閲覧可能
発:正真教教会聖典庁預言局『救世』計画主任管理官
宛:教皇官邸
偉大なる教皇聖下!
我が担当部局よりもたらされる報告の遅さに驚かれていることと思います。
お怒りはごもっともであります。試験開始以降に生じた報告遅延は聖下のまったくあずかりしらぬ原因によって生じたものであり、たとえいかなる説明が可能であろうとも、遅延の全責任が我にあることは疑う余地がありません。私はその責任を痛感し、本計画の試験結果をご報告するとともに、ただひたすら、偉大なる聖下の御寛恕を乞い願うものであります!
聖下より御裁可いただいた『救世』計画第一段階である《聖櫃》試験は、充分に成功といえるだけの結果を残しました。"楽園"に集められた"使徒"たちは、我々の予測を遥かに越える効率で"贖罪羊"を"救済"することに成功したのです!
《聖櫃》試験はこの後第三次試験まで執り行われ、そのすべてにおいて満足すべき結果を残しました。
『救世』は可能なのです!
わたしは、ここで満腔の自信をもって進言いたします。我々は、正真教教会とその信仰国家がもてるすべての軍事力を投じ、忌むべき闇と堕落した新派真教徒に支配された世界を解放しこの世の全てを正真教の福音で満たさねばなりません。その機会はいまここにあります!
教皇聖下! ペネレイアを新時代のオスティアとすべく、これまでよりさらに強い忠誠と献身を我々は救世母に誓うものであります!
偉大にして英知溢れる正真教教会教皇にして救世母の代行者たるアーシュラ・ドニ七世聖下万歳!
忠誠深き信徒にして救世母の使徒正真教教会聖典庁預言局司教メーヴェル・アイゼンクロイツ