■ 設定資料:各国の行政機構
ハイデルランド地方――わけてもエステルランド、ブレダの二王国は、それぞれの国情に相応しい行政機構を備えています。
キャラクターを……国家の要職に就くキャラクターを作る際には御参考にして下さい。
◇ A)エステルランド神聖王国
王制国家である神聖王国は、当然すべての最終的権限を国王が握っています。
しかし、《ハイデルランド併合戦争》を有能な家臣団の力で勝利した結果、貴族たちの発言力にも留意せねばならなくなりました。
結果、王室、貴族、教会の微妙な力の均衡によってこの大国の政治は運営されています。
また近年は、ヘルマン一世自身が国政への興味を失いつつあるため国政の中枢は貴族によって運営されつつあります。
A―a)神聖王国聖俗諸侯会議
王国憲章上、最も上位に位置する意思決定機関です。王国領内全土の貴族が参加する会議で、国家レベルの問題が発生した時に、国王と四大諸侯の過半数の同意があった場合にのみ招集されます。この会議で決定された命令は他のありとあらゆるものに優先します。
しかし、この会議
が開催されたことはこれまでありません。
A―b)四大諸侯会議
神聖王国聖俗諸侯会議に次ぐ権威を持つ意思決定機関です。四大諸侯――ヴィンス(現在はテロメア)公、ケルファーレン公、ミンネゼンガー公、アイセル司教に国王を交えた会議で、執政院(後述)命令と同等の権威を持ちます。これは緊急を要する案件に際して国王、あるいは四大諸侯の提議によって招集されます。
大抵の問題は、このレベルで処理されています。近年では、ツェルコン戦役への開戦決定がここでなされています。
王国聖俗諸侯会議と四大諸侯会議は、必要時に招集される緊急意思決定機関であり、平素から設置されるものではありません。
A―c)王国執政院
神聖王国における行政機関は、通常この執政院を指します。国王の意を受けて王国領内の行政を担当します。主な業務は全国から徴収した税金の分配、それを背景とした行政調整などです(財務省と内務省の権限を全て有しているとお思い下さい)。
人員は王室からの勅任官と貴族からの派遣官によって構成されており、任期は平均して五年弱です。
権限は非常に広範に渡りそれなりの権勢を誇ってはいますが、貴族たちの勢力争いの場ともなっており、必要な時に必要な命令を下すのが難しいのが現状です。
執政院は四府で構成されています。
1)内務府:国内諸問題を統括する部署です。公共事業、貴族間の利害調整、領土の制定等々を管轄しています。
2)財務府:王国領邦から税金を徴収・分配することを管轄しています。貴族は大抵この部署に人員を配したがる傾向があります。
3)外務府:外交を担当します。
4)都令府:王室領内の大都市、王国自由都市の管理・連絡調整を担当します。
A―d)王国軍令本部
神聖王国が戦時に突入した場合にのみ設置される軍事統帥機関です。神聖王国軍(正規軍、公国軍、近衛軍、傭兵軍)の指揮を行います。なぜ戦時のみの組織かといえば、平時は各国が軍を管理しているためです。
(平時の指揮系統図)
神聖騎士団=騎士団作戦部
公国軍=各公国宮廷内の軍統帥部
近衛軍=戦時は編成されず。
傭兵軍=統帥機構必要なし
王国軍令本部は、規模能力ともに最も高い神
聖騎士団作戦部を中核に、公国軍統帥部を統合した形で編成されます。
(戦時の指揮系統図)
王国軍最高司令官=国王
↓
王国軍令本部総長=神聖騎士団長兼任
↓
軍令本部統合統帥部(全軍の指揮統制)
↓
各統帥部(各軍の指揮統制)
A―e)王国法務院
国王のみが持つ権利――法律制定を管理します。また、国事犯に対する裁判も法務院裁判所が管理します。ここは貴族が未だに侵食できぬ聖域で、構成人員の大半が勅任魔術師――臣民上がりの官僚です(神聖王国においては、魔法が使えようと使えまいと伝統に従い、文官は一括して“魔術師”と呼ばれます)。天慧院・各国学芸院出身者がここに集まっています。また、法務院は治安維持組織として、その下部に王国保衛本部を設置しています。王国保衛本部は王国全土に支部を置き、治安維持活動に投入しています(これについては、王国自由都市すら例外ではありません)。
A―f)公国宮廷(公国内政院)
神聖王国は、別の角度から見れば四つの公国の集合体であるとも言えます。従って、各公国は執政院と同程度の権限を有
しています(建前では、執政院の指示を受けるということになっていますが)。
各国の行政は公爵下に置かれた内政院が担当します。王国執政院を小さくしたようなもので、公国内の行政はすべてこの部署が担当します。
◇ B)ブレダ王国
建国から四年弱経ったブレダ王国の行政機構は、非常にシンプルなもので国王に対する権力の集中が目立つ組織になっています(国王が有能なら、これほど効率のよい組織はありません)。国力が大きいとはいえないこの国では、すべてを効率的に使用せねばならないからです。
B―a)宮廷府
ブレダ国王を輔弼する部署です。複数の勅任補佐官と、その配下の官僚団によって構成されます。
勅任補佐官は下部輔弼局及び指導本部から一名ないし二名が選抜されます。彼らは己の管轄において国王に対して“助言”することを職務とし、実務に権限を持つことはありません(国王より権限を委任された場合は別ですが)。
国王は補佐官からの助言をもとに勅令を発します。
また、補佐官の中から意見調整役として筆頭補佐官が任命されます。
B―b)輔弼局
宮廷府の下部に置かれた実務組織です。しかし国王の命令があってはじめて権限を持つことができます。
1)内務輔弼局:内政に関するすべてを管理します。本領/北方領内の領国管理も実質的に執り行います。
2)外務輔弼局:外交に関するすべてを管理します。
3)工務輔弼局:国家建設計画推進部署です。
4)裁務輔弼局:立法を管理します。また、国内の治安維持も管理します。
などが輔弼局です。
B―c)最高指導本部
前述していますが、王国の軍事統帥機構として平時より設置されています。王国騎兵軍を管理し、軍令・軍政のすべてを管理します。ブレダ王国騎兵軍は貴族の軍ではなく、最高指導本部が一元管理しています。
B―d)国王大本営
戦時に設置される統帥組織で、軍事上の国王輔弼機関です。最高指導本部よりも上位に位置しますが、指揮系統上にはありません。国王大本営は宮廷府の軍務補佐官を筆頭に形成され、国家戦略上での助言を行います。それを参考に国王は決断を下し、その決定に基づいて最高指導本部が指揮統制を行います。
B―e)領国宮廷
領国とは、ブレダ王国における貴族領邦を意味します。とはいえ、ブレダ王国での貴族とは、領土を支配する者ではなく“管理”を任されているにすぎません(すべてが都道府県知事のようなものです)。内務輔弼局が持つ領国の管理権を委任された者が貴族と呼ばれ、領国を運営します。もちろん、不適当と判断された場合は即刻領国を剥奪され、次の貴族が決まるまでの間、内務輔弼局から派遣された代官(官僚団)が領国を管理します。
貴族のもとで領国管理を補佐するのが内務輔弼局から派遣された宮廷部員たちです。
◇ C)バルヴィエステ王国
バルヴィエステ王国の統治は実質的に正真教教会が執り行っています。
国内は大管区・管区・教区と行政区分があり、それぞれ指導者として聖職者あるいは信仰貴族が赴任、各区分内の統治を担当します。
C―a)正真教教会
正真教の総本山であるとともに、バルヴィエステ王国の枢要でもあります。
教皇を頂点に枢機卿たちによって構成される祭務会議が国政の全てを決定します。ここで決定された事項がバルヴィエ
ステ王国宮廷に送られ、発布されます。
祭務会議の下部には祭務補佐官と祭務会議事務局があり、膨大な事務処理を行っています。
C―b)大管区指導修道院(管区、教区も同様)
王国領土を二三分割する大管区、その統治を担当する修道院はこう呼ばれます。大管区教令指導者は大司教です。以下、管区教令指導者(司教)、教区教令指導者(司教ないし第一位司祭)と続きます。